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介護AI

介護のAI導入、何から始める?——2025年の方針転換と「進む領域・止まる領域」

見守り・記録・生成AIは進み、装着型ロボットは止まったまま。2024〜2026年の介護AI導入の実態を、厚労省の方針転換と現場の声から整理し、「何から始めるか」の判断基準を示します。

KOTOSAQ編集部

夜勤明けの申し送りが終わると、机の上には介護ロボットの営業資料と補助金の案内が積み上がっている。見守りセンサー、装着型アシストスーツ、AIケアプラン支援。どれも「人材不足の切り札」を名乗りますが、どれから手を付けるべきかを判断する材料は、驚くほど少ないのが実情です。

今回、X(旧Twitter)を中心に2024〜2026年の介護AI導入の動向を調べて見えてきたのは、「導入が進んでいる領域」と「止まったままの領域」がはっきり分かれている実態でした。先に結論を言うと、進んでいるのは見守りと記録——つまり「体に触れない仕事」のAI化です。

国は2024〜2025年に「実証」から「業務で使う」へ舵を切った

背景にあるのは人材の数字です。厚生労働省の推計では、2040年度に必要な介護職員は約272万人。2022年度から約57万人の上積みが必要で、採用と処遇改善だけで埋まる差ではありません。

この2年で、国の姿勢は目に見えて変わりました。2024年6月、厚労省と経産省は「ロボット技術の介護利用における重点分野」を改訂し、名称を「介護テクノロジー利用の重点分野」に変更。「機能訓練支援」「食事・栄養管理支援」「認知症生活支援・認知症ケア支援」の3分野を加えた9分野16項目に広げました。「ロボット」から「テクノロジー」への言い換えは、機器単体ではなくデータ活用まで支援対象にするという方針転換の象徴です。

さらに2025年4月、「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会の中間とりまとめは、ケアプラン(居宅サービス計画書)やサービス担当者会議の議事録の原案作成に生成AIを活用する方向に言及しました。国の公式文書が生成AIの使いどころを名指しした。これがこの2年でいちばん大きな変化です。

成果を出した事業所は、機器ではなく「情報の流れ」を変えていた

タブレットをそばに置き、利用者と目線を合わせて会話する介護スタッフ

では、現場では何が効いているのか。東京都世田谷区の特別養護老人ホーム「砧ホーム」は、見守り支援機器とインカム、音声通知を連携させ、入居者の状態変化がその場で職員に共有される流れを作りました。同ホームの厚生労働省掲載の資料では、常勤介護職員の離職率が2020年4月から2023年8月まで3年連続で0%だったとされています(法人側の公表)。2023年度には「介護職員の働きやすい職場環境づくり」内閣総理大臣表彰を受けています。

注目すべきは、この成果が「高性能な機器を置いたこと」からではなく、見守り→通知→記録という情報の流れを一本化したことから生まれている点です。機器はその流れの部品にすぎません。

進むのは「見守る・書く」、止まるのは「体に触れる機器」

Xの現場の声も、この分岐をなぞっていました。見守りセンサーには「夜間の状態が一目でわかり、サービス向上につながった」、装着型スーツには「腰への負担を考えたら装着時間は惜しくない」という肯定的な投稿がある一方で、導入をためらう側の理由は「価格が高い」「使いこなせる人材がいない」「設置スペースがない」に集中しています。

つまり分岐の正体は、効果の有無ではなく導入ハードルの高さです。装着型や大型の機器は、初期費用・設置スペース・操作の習熟・対象者の選別と、越える壁が多い。対して記録・申し送り・計画書といった「書く仕事」のAI化は、手元のスマホやPCで始められ、合わなければやめられます。撤退のしやすさまで含めて、最初の一歩に向いた領域です。

「書く仕事」のAI化を、記録と申し送りから

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生成AIの線引きは「原案までAI、確定は人」

AIが作った下書きをタブレットで読み、紙の資料と照合する介護スタッフ

見落とされがちですが、中間とりまとめが挙げたのもあくまで「原案の作成」です。ここを読み違えると運用が崩れます。

生成AIは、もっともらしい誤った文章を作ることがあります(ハルシネーション)。記録や計画書の下書きに使う場合でも、確定前に必ず職員が内容を確認し、最終判断は人が行う運用にしてください。

導入前に決めておくことは2つ。誰が確定前チェックを担うか、そして利用者の個人情報をどの範囲まで入力してよいか、です。この「現場の音声メモ→AIが下書き→人が確認して確定」という流れ自体は、KOTOSAQのような音声入力型の記録支援ツールがカバーしている領域ですが、どのツールを選ぶにしても、この2つのルールを先に決めていない事業所では定着しません。ツール選定より運用ルールが先です。

2026年4月の介護情報基盤は「一斉スタート」ではない

もうひとつ、Xでも誤解が目立ったのが介護情報基盤です。「2026年4月に本格運用が始まる」と紹介されることがありますが、厚生労働省の資料によれば、2026年4月は標準化対応を終えた市町村から順次データ送信が始まる時期で、全市町村での活用開始は2028年4月が目標です。

明日いきなり何かが変わるわけではありません。ただし方向は明確で、ケアプランや主治医意見書といった情報は、事業所・自治体・医療機関の間でデジタルに連携される前提へ移っていきます。記録が紙のままの事業所は、この連携の入り口に立てません。急ぐ必要はないが、逆走はできない。そういう種類の変化です。

紙の記録からの移行、何から始めるか相談できます

介護情報基盤を見据えた記録のデジタル化について、事業所の規模と状況に合わせてご案内します。

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高価な機器の検討より先に、ストップウォッチ

2024〜2026年の動きをまとめると、国の後押しは公式化し、成果事例は「情報の流れの設計」に集まり、現場の壁はコストと習熟に残ったまま——という構図です。この状況で明日からできる一歩は、機器のカタログを開くことではありません。

まず1日だけ、記録・申し送り・計画書づくりに職員が使っている時間を測ってみてください。その数字があれば、見守り機器が先か、記録のAI化が先か、装着型はそもそも自分の事業所に要るのかを、自分たちの言葉で判断できます。補助金の申請書に書く「導入目的」も、営業資料の受け売りではなく、自分の事業所の数字から書けるようになります。

画像:AI生成によるイメージ

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紙で仕事をしていた頃の現場のやり方と、システムを入れたあとに生まれる3つのズレ(ツール分散による二重三重チェック・職種別最適化不足・メモや家族連絡の二重記録)を、今日からできる工夫と、次に選び直すときに見るべき視点に分けて解説します。

(更新: 2026年8月16日)